1- とても心配なのは、アスベストの被害が顕在化しはじめてきていること。
これから何年も予想以上に大きく悲惨な状況が現れてくるのではないかと気になります
日本では未だ、水俣地域での有機水銀中毒による身体被害に対して十分な対応が
なされていない現状において、このアスベストの被害に対して真摯に対策がなされるのか、とても気になります。
2- ほっとする想いは、世界で累積CO2排出量の最も多い米国で、やっと、オバマ大統領が気候変動対策に本格的に取り組むようになったこと。
オバマ政権が、エネルギー政策を結びつけて大規模なグリーン雇用政策を立てて、大幅な温暖化ガス排出量削減に取組めば、中国やインドやブラジルの国々も続くことになるでしょうから。
3- 多様な生命と人間の秘められた可能性についての象徴的なことは、水圧770気圧の日本海溝でしなやかに泳ぐ体長30cmほどのカサゴのような超深海魚が見つかり撮影されたことと、1400年の歴史をもつ法隆寺の「玉虫厨子」を平成の今に蘇らせて1000年後まで伝えようという故中田金太の祈りと財政支援が伝統職人の魂と技と熱意を鼓舞させて完成させたこと。
2008年9月30日に東京大海洋研究所と英アバディーン大が世界で初めて撮影し
た“餌に群がり泳ぐ超深海魚”の姿は常識を覆し、多様な生命の秘める大きな可能性を示唆しています。このようにまだまだ未知な存在の生命の多様な形態を、未来に渡してゆく責任と義務を、私たちは改めて深く自覚する機会ではないでしょうか。
4年の歳月をかけて完成された復刻版と平成版の「玉虫厨子」二基で42,764枚の玉
虫の羽を使ったと知った私は、玉虫の命を最終的にはいくつ頂いたのかと尋ねたところ、国
立科学博物館の科学技術史グループ長の鈴木一義氏から深い響きのご返事をいただきました。
「 直接的にはひとつも頂いていないと、聞いております。玉虫は、古い木の朽ちた部分に卵を産み、育ちます。その役割を終えた玉虫も、そこで一生を終えますが、玉虫の羽根はそのまま朽ち果てることなく残るそうです。縄文時代の玉虫の羽根に、色が残っているものが確認されています。厨子は、その目的から考えても、殺生を禁じているわけですから、その一生を終えた玉虫の、残った羽根を利用したと。朽ちた木の中に残る玉虫の羽根は、泥沼の中に綺麗な花を咲かせる蓮の花と同様に、蘇る命、繋がる命の象徴として、厨子に相応しいと、当時の人々も考えたのでしょう。人々や社会の安寧を願い、祈り続けられてきた厨子。そこに込められた千数百年に及ぶ想いと意味を、今の日本は、あらためて考える必要があるように思います。」
何という生命観と行動様式でしょうか。今、地球規模で最も希求されている多様ないのちへの畏敬の念と、それを行動で現す謙虚な姿勢。私たちの唯一の生きる場所である、この地球上の生命系そのものが不可逆な方向で機能できなくなるという危機を造り出してきた産業革命以降の破壊的な経済活動や、生物を切り刻んで理解し人間のために利用する”近代サイエンス”とは全く相反する姿勢です。
私たち人間は、自分を生んだ母胎である多様ないのちを毎日頂くことで生きているという深い意味を認識し、行動を起こす時が熟していると、「超深海魚」と「玉虫厨子」はメッセージを発しているのでしょう。
そして、ここに日本人の歴史的な役割の可能性をみいだします。
黒坂三和子(くろさか・みわこ)
1980年代後半から日本の地球環境・開発の政策形成に直接・間接的に係ってきております。
「世界資源研究所―日本」 http://www.wri-jp.org/
「行動”多様ないのちを還す“」代表 http://miwako-kurosaka.com/
「持続可能な発展のための日本評議会(JCSD)」事務局長 http://www.jcsd.jp/