江守 正多 (えもり せいた)
国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室長
・北極海の氷、急速に減少と警告
今年9月に観測された記録的な減少を含め、近年の北極海の海氷の減少は、シミュレーションモデルによる予測を上回るペースで生じているようです。これは、もしかしたら自然の変動によるものかもしれず、このままのペースで減り続けるか、今後また少し緩やかになるのかは分かりませんが、注視していく必要があります。
シミュレーションモデルは不完全なので、現実の温暖化を過小評価している可能性もあります。その分野の研究に直接携わる者としては、現在の予測が大幅な過小評価でないことを祈ると同時に、予測の改良に努めていく必要性を改めて感じさせられる出来事でした。
・猛暑 国内の最高気温の記録74年ぶりに更新 熱中症でも死者多数
74年前はあまり温暖化してなかったのだから、温暖化しなくても40.8℃の日があった、というのが面白いところです。たまたますごいフェーン現象とかあれば、そういう温度は出るわけです。それだけ考えると、今年の40.9℃だって温暖化と関係あるか分かりません。
しかし、日最高気温のベストテンを見ると、ほとんどが近年に集中していますので、近年に暑い日が起こりやすくなっているのは間違いありません。その原因の一部は都市化である可能性がありますが、一部は温暖化と考えられます。という具合で、今回の最高気温記録は、異常気象と温暖化の関係を説明する上で興味深い事例になったと思います。
・ノーベル平和賞に地球環境問題
「政治的」との声がありますが、それは別に悪いことではなく、政治的に重要と認められたことに意味があると思います。なぜ温暖化が平和と関係あるかということですが、温暖化で深刻な被害を受ける国が出始めると、難民やら地域紛争やらといった形で国際社会の不安定要因になるという認識が広まってきた
ためと思います。
温暖化の影響とは、自国の気象の変化などを通じた直接的なものだけでなく、国際関係を通じて間接的に受けるものがあるという認識が重要だと思います。
プロフィール
1970年神奈川県生まれ。
東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。
1997年より国立環境研究所に勤務。
2006年より国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室長。
海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センターグループリーダー、ならびに東京大学気候システム研究センター客員准教授を兼務。
専門は気象学、特にコンピュータシミュレーションによる地球温暖化の将来予測。
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