籾井 まり(もみい まり)
国際温帯雨林ネットワーク日本代表
- 地球温暖化への焦点
ゴア氏の「不都合な真実」やスターンレビュー以降、地球温暖化への注目が高まりました。しかし同時に、何もかもを温暖化という物差しで測ると、環境保護全体を考えた時に弊害が出てくることもあります。
例えば、温暖化対策の面では非常に評価の高いバイオ燃料ですが、パームやしやサトウキビを栽培するために天然林が伐採されるなどの問題があります。世界に残る天然林はあとわずか。私たちは本当に天然林を失っても生きていけるでしょうか?
温暖化対策はもちろん重要ですが、地球のしくみは複雑です。来年はもっと社会全体が多角的に環境問題に取り組めるようになることを願っています。
- 小売大手のAEONがMSCを導入
小売業界の最大手であるAEONが、Marine Stewardship Council(MSC)という魚類の認証制度を導入しました。
MSCは、持続可能な漁業をサポートする認証制度で、「海のエコラベル」とも呼ばれています。MSCのスタンダードや制度自体についてはまだまだ改善の余地はあるのですが、ともあれ、漁業大国日本でこうした制度が大手企業に取り上げられたことは大きな進展です。
現在、世界の魚類資源の3/4は激減していると言われ、2048年までには世界中で魚が不足するという研究もあります。世界の多くでは魚しか食べるものがない人たちがいる中、ヨーロッパ、アメリカとともに魚を世界一多く輸入している我々には重大な責任があるのです。
- 象牙の限定輸入決定
今年の第14回ワシントン条約締約国会議で、各条件が整えば、日本が南アフリカ諸国から象牙を輸入することが決まりました。
象牙の輸入は1989年に世界的に禁止になりましたが、過去にも一度、例外として日本が輸入国となり南アフリカの3カ国から輸入をしています。世界的に見ると、アジアや中央アフリカなど、ゾウが絶滅の危機にさらされている地域は多くあります。こうしたゾウ達の密猟がいまだ絶えない中、私たち日本人は本当に象牙をそれほど必要としているのか?
今回の輸入の決定は本当に大多数の国民の意図を反映しているのか?非常に疑問を感じます。
プロフィール
福岡県生まれ。イギリスケント大学、環境法学/環境保護博士号取得。
ロンドンに本部を持つ国際環境NGO、Environmental Investigation Agency にキャンペーナーとして勤務後、日本に帰国。
現在、国際温帯雨林ネットワーク日本代表、アメリカに本部を持つInternational Fund for Animal WelfareのCITESテクニカルエキスパートなどを努める。
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