1.洞爺湖サミットの開催と排出量取引の試行的実施
日本も遅ればせながら、また、不十分ながら排出量取引制度を導入した。地球温暖化問題は、環境問題から、将来の低炭素社会を目指して、エネルギー・産業構造転換に向けた先進国対発展途上国の経済的、政治的な争いの様相を呈してきている。持続可能な社会実現の観点からは枯渇性資源の消費を減らし再生可能エネルギーを主とした低炭素社会を目指すべきと考えるが、CO2を出さなければ枯渇性資源の消費(原発、CCS)でも良いというのは、早計過ぎると考える。
2.カーボンオフセット商品の普及とカーボンフットプリントの検討進む
環境省が2008年2月にカーボンオフセットのガイドラインを公表して依頼、多くのカーボンオフセット商品が発売された。カーボンオフセット商品の購入が、CO2の排出削減につながるのか疑問もあるが、セットで提供された京都クレジットをカーボンオフセットプロバイダーが償却口座に移管すれば京都議定書の目標達成に貢献し、取消口座に移管すれば京都議定書とは無関係に削減される。後者のみをカーボンオフセットという意見もある。また、商品のライフサイクルでのCO2排出量を商品に記載するカーボンフットプリント制度も、昨年12月のエコプロダクツ展で試行的に実施され、今年から一部の商品で実施される模様である。
3.古紙偽装の発覚と効果的な公害防止取組促進方策検討会報告を公表
昨年初めに古紙の配合比率を過大に表示していることが明らかとなった。また、環境省が昨年4月に効果的な公害防止取組促進方策検討会報告を公表した。ここ数年大気、水域への排出濃度等のデータ偽装等不適切な事例が多発した。非定常時の規制値の取扱等課題も多いが、温暖化問題の前に忘れがちである、これらも重要な課題である。
魚住 隆太(うおずみ・りゅうた)
KPMGあずさサステナビリティ㈱ 代表取締役〔公認会計士、環境計量士〕
大阪大学基礎工学部卒業。通信機メーカー等を経て、1985年朝日新和会計社(現あずさ監査法人)に入社。2004年4月あずさサスティナビリティ㈱(現KPMGあずさサステナビリティ㈱)を設立、CSR報告書等の第三者審査、CO2削減量検証業務等を行い現在に至る。日本公認会計士協会「排出量取引等専門部会」部会長、有限責任中間法人「サステナビリティ情報審査協会」会長、「国内クレジット推進協議会」監事、環境省「中央環境審議会総合政策部会・環境に配慮した事業活動の促進に関する小委員会」委員。
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