■金融経済の崩壊=持続可能な社会のための経済へのチャンス
2008年9月15日、リーマン・ブラザーズが米国連邦破産法の適用申請をしました。これに端を発し、世界経済が一気に傾きはじめました。とは言え、2007年に顕在化した米国サブプライムローンの問題から米国型自由市場主義の生み出した金融経済は、既に限界に来ていたと言えます。
これまで、経済発展は、社会に様々な価値を生み出 してきていました。しかし、経済が生み出せる新たな価値が見出せなくなり、ついに生活者には、ほとんど価値を生み出さない、バーチャルな金融経済が膨らんでいったのです。今回、それが弾けたことで、私たちは経済について考え直す機会を得ました。
既に欧州では、真の社会発展のための経済やそれに必要な指標づくりがはじまっていますし、米国でも議論が起こっています。
今、世界にとって、地球環境という制限が見え始めており、その中で持続可能に発展していくための仕組みづくりも議論のポイントとなっています。
この金融経済の崩壊は、持続可能な社会をつくっていくための新しい社会の在り方、経済システムを生み出していく大きなチャンスではないでしょうか。
■生態系と生物多様性の経済学
2008年5月29日にドイツ・ボンで開催された生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)の閣僚級会合にて「生態系と生物多様性の経済学」というレポートがEU委員会ならびにドイツ政府から発表されました。
これは、生態系サービスや生物多様性と経済との関係について、とりまとめたものであり、「生物多様性版スターン・レビュー」とも言われています。
世界中の人が、先進国並みの生態系サービスを利用すると、地球の生態系では足りないことが明らかである今、生態系サービスをより大切に、持続的に利用することが人類の発展に必須の課題となっています。
生態系の持続的利用を経済システムに組み込んでいけるのか?私たち人類にとっての大きな挑戦が始まろうとしています。
生態系と生物多様性の経済学 日本語版(日本生態系協会)
http://www.ecosys.or.jp/eco-japan/teeb/eco_teeb_jp.pdf
■若手専門家による地球温暖化対策審議会(若手審)
2008年5月20日、日本の地球温暖化に関する若手専門家が地球規模の視点で採るべき対策を議論し、とりまとめ、その報告を公表しました。
実は、私が座長をしていたので、手前味噌になってしまい、すいませんが、多くの方から「本質的な提案をしている」「解り易くまとまっている」と好評を得ていたので、是非より多くの人に読んでいただきたく、紹介しました。
若手審の最終報告書では多くの提案がされており、他にはないものもあります。その1つに、将来的(2050年までに)な国際枠組の基本原則の合意の必要性と、具体的なその内容について提案しています。
それは、「全ての人における消費ベースの排出機会の平等」という原則と
1.全ての1人当たり平等な排出量を割り当てる。
2.素材産業と電力については、輸出入時に国家間で排出量をやり取りする。
3.その他産業は、C&T制度でやり取りをする。という制度です。
ポーランドで行われたCOP14では、中国の研究者から「2050年までに1人当たりの排出量を平等にする」という提案もありましたし、欧州の進めるC&Tや日本提案のセクター別アプローチの意味する平等性を加味した制度だと言えます。
若手専門家による地球温暖化対策審議会 最終報告書
http://wakateshin.exblog.jp/8889779/
Everyone could get CO2 permits:China study(ロイター)
http://uk.reuters.com/article/environmentNews/idUKTRE4B77IC20081208?sp=true
川島悟一(かわしま・ごいち)
1976年、静岡県生まれ。
東北大学 大学院理学研究課博士前期過程修了。
荏原製作所で廃棄物・エネルギーのマーケティング業務を経て、博報堂チーム・マイナス6%運営事務局ディレクターとして企画立案に携わり、現在は、環境コンサルタントとして独立。主な業務は、滋賀エコ・エコノミープロジェクト事務局、横浜市環境創造審議会地球温暖化対策検討部会専門委員など。
じぞひろ.com(持続可能性の理解を広げるサイト)
http://www.zizohiro.com
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